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不均質な家〜201号室リノベーション


2010.3-2011.7/SRC造集合住宅の一住戸のフルリノベーション/「リプラン」vol.34,pp.128-131,2012WINTER&SPRING,2012.1/延べ床面積77.4㎡/多賀城市

リノベーションの社会的意義|日本の全住宅約4960 万戸(H20, 住宅・土地統計調査)のうち、共同住宅は4 割で、そのうちRC 造3 階建て以上は約1370 万戸と、全住宅の約3割となる。国は良質な中古ストックを活用するため、住宅性能水準の向上を謳っているが、本計画ではそのモデル提示を目指した。本計画は1982 年以降に開発された集合住宅団地の最初の住棟にある一住戸のリノベーションである。設計時、築29 年であったが、80 ~ 90 年代に大量に供給され、市場に豊富な中古物件のコストメリットと、SRC 造、鋼管杭の打設、管理組合による修繕や設計図書の保管状況が良好だったことから、計画が始まった。

廊下のないプラン|集合住宅の定石である中廊下と複数の個室からなる構成を解体し、限られた面積の中で最大限、空間を有効に使うことができる型として、廊下の無いプランとした。動線空間は廊下でありながら、ギャラリーであり、ウォークインクローゼットであり、ワークスペースとなる。動線には行き止まりが無く、建具の開閉により適宜、空間を囲い取れる。本計画では南北方向に3本の動線があるため、生活上の利便性だけでは無く、換気・通風の性能も向上した。

素材と光|質感の高い素材として、秋保石(玄関床、キッチン土台)、柳生和紙(ギャラリー壁面)、薩摩霧島壁(天井)、楢無垢フローリング(床)を用いた。これらの素材はムラ感があり、不均質な表面を持つがゆえ、時間とともに表情が変化し、居心地の良さを感じさせる。素材感を生かすため、照明計画としてシーリングライトは設けず、スポット、ブラケット、ペンダント、間接を設置した上、調光機能を持たせた。

身体と空間|一室状の空間ゆえ内部空間には居場所の選択肢が多様で、また、可変的な壁面や制御可能な照明に対する働きかけを図っていることから、本案では身体と空間の関係が活性化される。「不均質さ」には、鈍化した身体感覚を覚醒させる効果がある。